2020年2月19日水曜日

マントラの響きは魂の祈り

新型肺炎のニュースが毎日のように流れているなか、
ダライラマがマントラを唱えることが感染予防につながる
という声明を中国在住の信者たちに向けて発表した。
特にあるタイプのマントラを唱えるとそれは新型肺炎に
とても有効だという話だった。

マントラというのはお経の一種で
インドやチベットなどで僧侶が唱える声明である。
日本ではよく『ありがたいお経』という表現をするが
実際、高野山などで見かける集団でお経を唱えている様子は
非常に神々しくまた少し畏怖の念を感じさせる何かがある。

流行り病に効くというマントラの意味は
分かりやすくかみ砕いて言うならば
『神を信じることによりこの世にある様々な苦しみを
私は乗り越えていきます』
というような概要であった。
「マントラは意味を理解しなければ意味のない言葉である」
ダライラマは来日した際にある日本人にそう語っている。
そしてマントラの効果は、その宗教における神の存在と
その力を信じていることが前提条件である。

マントラはこうした宗教色に満ちたものだが
同時に音楽であると私は思う。
古代、音楽は宗教と共にあった。
世界のあらゆる場所で
巫女や神官が神殿で祈りを捧げる時
祈りはフレーズとなり、
その地域独特のメロディーやリズムが伴った。
神事は神に捧げる一種の芸術であったように思う。

その原点は、人間の力の及ばないところ、
大自然の摂理への畏敬と畏怖、そして賛美
美しさは同時に恐怖を感じさせるものでもある。

今以上に疫痢で亡くなる人の多かった古代では
神に祈りを捧げることが治療法でもあった。
病に倒れた者は意識の奥でマントラを聴くことで
自らの自然治癒力を高めていき
中には奇跡的な回復を遂げた事例もあったのだろう。

美しいマントラを歌う人がいる。
その人はネパールに生まれ
チベットに修行し女性僧侶になった。
 私の家族はこの動画を見て
『ドクター・ストレンジのエンシェント・ワンのようだ』
と感想を漏らしていた。
確かに不思議なほど、心が穏やかになれる。
この優しい、柔らかに語りかけるような歌声を聴いていると
疲れた心身に染み渡る薬草湯につかっているような気持になる。

チベットではグリーンターラ
インドではマーリアンマン・ガーヤトリー
そしてきっとどの国にもそれに匹敵する女神がいる。




















2020年2月14日金曜日

年月を経て聴こえる弦の響き

Nick Beggsの三枚組のアルバム『Words fail me』を購入した。
日本のサイトでは情報が遅く、購入してから一か月後に
販売開始したのを知った。
やはりポップカルチャーの第一線から退いた
アーティストに対し残酷すぎる音楽業界。

1枚がカバー集、あと2枚は過去のオリジナルアルバム。
いきなり3枚揃えて嬉しい。
けれど『Stick insect』ばかり聴いてしまう今日この頃。
穏やかな気分になれる曲が多い。
この人は不思議だ。
他ではもっとハードな音を
取りつかれたようにバリバリ出しているのに。
この人はなんて器用なんだろう。
『The Raggea man's Hair Do 』
タブラの音でエスニックなスパイスを散りばめて
しれっとのどかな音を奏でている
『レゲエマンの結髪』ってタイトルも面白い    



私のお気に入りはこれ。
『Tonto's return』
『トントの帰還』
ディスカバリーチャンネルで一時大人気だった
『Glove Trekker』のBGMみたいなフレーズ。
飛行機と鉄道、さらに船を乗りついで
辿り着いた故郷みたいなリズム。

しばらく前にも重ねて言ってたけれど
Nick Beggsはカジャ・グーグー時代のアルバムを
好きじゃないという。
結構いい音出してたよね、
と特別なファンでなくても思っている人は
結構多いのに。
そしてちょっと詳しい人はこう思う
『え?じゃあ『Islands(アイランズ)』も好きじゃないの?』
答え:ええ、そうなんです・・・
その理由というのがどうやら
『カジャ時代のアルバムは多忙の中、
スタジオ缶詰で徹夜やっつけ仕事で作ったものだから』
今聴いてもずいぶんアラが目立つ、とのこと。
『どこがどうアラなんですか、ニック先生!?』
と思うのが当然だと思う。

ただその後の活躍が地味とは言え、Steven Wilsonのライブなど
ものすごくクオリティの高すぎる場所にいるので
確かに今の立場からしたら色々思うところはあるに違いない。
ああでも、なんだか勿体ないな、と思う時がある。
かつて、カジャ再結成時のドキュメンタリーでは
凄く嬉しそうにしていた彼のことを思うとちょっと切ない。

そしてNick Beggsは最近、Howard Jones、Robin Boultらと
共にライブをしている。お互いのライブが無い時間の空いた時に入れているようで
カジュアルなライブハウスで演奏している。
合間にフランクな会話を楽しんだりしている。
目の前でにこやかに耳を傾けている
たぶん同級生のようなおじさま軍団に紛れ込みたい。
曲は懐かしの『What is love?』


そしてここはもう少し大きめのホールで
3分ほどのおしゃべりの後でおもむろにはじまる
Howardの声による『Too Shy』のリフレイン


Nick BeggsはHoward Jonesとずっと仲良しらしく
時々部屋で気軽にセッションをしてる動画をUPしていた。
(どうでも良い話だが、ちなみに80年代結構好きだった
"でも周りに聴いてる人いなかった"のNick Kershowとも
お友達で、先日大昔もらったプレゼントが出てきたと
スタートレックに身をつつんだ人形(超レア?)を公開し
『これって何か、隠された意味があるものかな?』と
コメントしてた)

たしかに80年代、聴く側は
彼らの音楽と淡麗な容姿を楽しませてもらった。
でも今、年齢を経てすごくイイ顔をしている彼らを見てると
また新たな形で幸せを享受しているようで嬉しい。
今の時代、こんな風に素直に喜べることって
そうそうないと思うから。

ちなみに
私の一番好きな彼らのライブは
10年ちょっと前のもの。
『Dream On』
もう一度、人生にかけてみようと思う男の歌。

Howard Jonesがレコード会社を解雇されて精神的に絶望を感じ
辛い日々を送った後、奮起して会社を興し、
作成したアルバム『Angels and lovers』
この曲は日本のテレビドラマのOPにも使われていたから
知っている人は意外に多いかもしれない。
この曲の前奏曲としてNickが少し自分の曲を弾き
そのあとでファンキーなベースに移っていくところが本当に粋だ。

Nick Beggsはチャップマンスティックという楽器を
カジャ・グーグー時代、ふと訪れたライブで知り
当時情報のほとんど無い状況の中で調べ尽くして
買いたいと思っても高価すぎて手が出せなかったそうだ。
ちょうどその頃、色々あってカジャからリマールが抜けた。
そして次のボーカルは君だ、とレコード会社から言われた時、
チャップマンスティックを買うことを条件に
ボーカルを引き受けたそうである。
正直、あの楽器を弾きながら歌うのはものすごく
難しいのではと思う。
でもこの新たな楽器が彼の新たな地平を開くことになるのだ。

いつか彼らの音をそばで聴いてみたい。
            
おまけ:
1987-1990まで在籍していたバンド
Ellis Beggs & Howardの
『Where Did Tomorrow Go?
80年代後半の雰囲気に満ちている 

 結構面白いと思うのだけれど現在、LPしかない・・・
LPって・・・以前買った超レアのシリアのDabkeアルバムみたいな・・・


















2020年2月4日火曜日

時代がやっと追いついたかもしれない

ひさしぶりのThe the(ザ・ザ)
当時ですら聴いてる人は周囲では殆どいなかった。
Amazonなどのレビューを見ると
しっかり固定ファンがいるのだが、殆どが男性のようだ。
当時、少年だった人が青年になって、おっ〇〇・・・否、
年齢を重ねた大人の男性になってなお、聴き続けている人が
ここ日本でも少なからずいるようで嬉しい。

私が初めてThe theを聴いたのは
10代後半だった。
今でも『Infected』を聴いた時の衝撃を
はっきり覚えている。
非常に肉感的な、野性味あふれる、
これぞ大人の音楽!という感じだった。
煽情的な、挑発するような曲の数々、
Matt  Johnson(マット・ジョンソン)の
渋いささやき声や、情熱的なシャウト
どことなく危険な香りのする曲調、
今まで聴いてきた音楽とはちょっと違うぞ、
そんな感じだった。
特に気に入った曲、『Sweet bird of truth』


The theは90年代に入って一度来日して
川崎クラブチッタで行った以外
来日したという話は聞いていない。
数少ない私のライブ経験のなかでも
行っておいてよかった、と思うライブのひとつである。
注目してたところに
ちょうどその頃、スミスをやめてバンド流浪の旅に出ていた
Johnny Marr(ジョニー・マー)が参加して
日本に一緒に来てくれたのはとてもラッキーだった。
『Johnny!』とMattが叫ぶと
ハーモニカを吹き始めるJohnnyがそこにいた。
「Mattとは以前から友人でロンドンに来た時に泊まったりしてるんだよ、
『Infected』を聴いた時、 自分がこのバンドで活動する姿が見えたんだよ」
と当時のインタビューではそんな風にうれしそうに答えていた。
そしてThe the 独特の雰囲気にすっかり溶け込んでいた。
当時のライブの最後の曲『Giant(live)』
他人に素顔を見せない男の哀歌。




2013年にJohnny Marrがソロ・アルバムを出してから
またThe theを聴くようになった。
時々無性に聴きたくなるのだが
最近、聴くたびになんとも言えない気分になる。
70年代~90年代初頭のイギリスのポップミュージック界は
表現方法に鬼気迫るものが見られる
個性の特出したアーティスト達が多かった。
歌詞も何か不穏な未来を予測して
警鐘を促すような独創性の高いものが多く散見される。

The theも今聴いたほうがしっくりくる。

不安定な社会、
愛情を求め彷徨う人々、

この先、私たちは一体、
どこへ行こうとしているのだろう

自分のことすらはっきりと
分かっていないのに

今夜もまた
飢えた犬のような
想いを抱えつつ

明日をどうにか生きていく

現代はそんな時代になっていないだろうか

誰も信じられない人が
多くなってはいないだろうか

そんな現代病の縮図のような曲、『Dogs of lust』



今日はこの曲の入ったアルバムをずっと聴いていた
『Slow Emotion Replay』(『Dusk』より)
時代がやっとこの曲に追いついたのかもしれない




最近Mattが時々、新曲を披露してくれるようになった
以前と変わらない渋い歌声
けれど少しだけマイルドになったような気がする
聴くものを癒すような、大人の男性の歌




あのむせかえるような妖気は少し和らいで
胸に秘めた想いを少しずつ吐露するように歌う

あの頃のアーティストには
逆立ちしたって到底かなわない
やっぱりThe the はいつも
私たちのずっと先を歩いている

そんな風に思わせてくれるThe theが好きだ






Madonna - Beautiful Stranger (Official Video) [HD] 90年代後半からのマドンナ

Madonnaって80年代、90年代、と年代ごとに全然違う顔をしている。 ごく初期の物も好きだけど、90年代以降の彼女のアルバムは 今聴いても凄く面白い。 William Orbitのプロデュースの頃の『Ray of light』『Music』は 本当に何度も聴いたことか。 その...