2019年2月28日木曜日

曲の名は(スタカン)

Style Councilの曲でどうしても分からない曲が何十年ぶりかに判明した。
『クロスオーバー11』という昔NHK-FMの番組でかかっていた曲で
カセットで録音したものだ。
それもカセットは品質が余り良くなかったため
当初からボロボロの音源だった。
まさか今になって見つかるとは信じられない。
うれしくて仕方がない。
見つけた時は思った以上に深くときめいた。

突然の恋のように
その曲は私の前に現れた
一瞬ハートが高鳴った。
心臓にはあまり良くない現象だ。

以前、自分でもかなり探したし、詳しい人にも聴いてもらったりもした。
でも結局、何の曲なのかはわからず、長い長い年月が過ぎていった。

あの人(曲)は誰?せめて名前(タイトル)だけでも・・・

そして先日、虫の知らせか、
今の時代なら何かしら分かるかもと、
ネット検索にかけてみると、2006年に発売されていた
『Our Favorite Shop』 の2枚組デラックスバージョンの2枚目に
見覚えの無いタイトルを数曲見つけた。
分からない曲を探し出す時、
私はいつもそうなのだが
1曲ずつその見覚えのないタイトル曲を視聴していく。
一見すると手間に思えるが実はそれが一番近道なのを知っている。

そしてついに見つけた。
その名も『Spin Drifting』
本当に、海の中で彷徨い続け漂着したような1曲。
聴いてみるととてもシンプルなもの。
でも私には
海岸に打ち上げられたガラスのボトルが
太陽の光でキラキラと輝く
砂にまみれた宝石のように見える。

素敵だ。
そして何もかもが懐かしい

ギターのカッティング、
ハモンドオルガンの音色
ポールの歌声

何度も繰り返すフレーズと歌詞
まるで陸の孤島にいるように
孤独に打ちひしがれている男が
自分を見つけてもらえるように
必死に祈り願う歌
もがくことすらできず
絶望の中で奇跡を待ちわびていて
人生がただ過ぎていくという・・・

あの時代

こんな歌詞を聴いていたなんて・・・

80年代は明るい歌ばかりじゃなかった
人生の裏街道みたいな歌詞も一杯あった
それは
ダブル・デッカーバスにぶつかりそうなThe Smithsの歌、
妖しげな館でうろうろしているMatt Johnsonの歌、
全速力で恋人を振り切って逃げる
愛し愛されることを恐れるKate Bushの歌まで
ありとあらゆる精神の危機を詩的に歌い上げていた
時代だった。

それはわかりすぎるほど
わかっていたけれど

最近そんな風に歌詞を改めて吟味することも
少なくなってきていたせいか
このダークな、救いのない歌に秘めた
アーティストの想いに胸が高鳴る。

嘘みたいだけど、あの頃はこれからも
Style Councilがずっと続いていくと思っていた。
D.C Leeともずっとhappy ever afterだと。

歳月は彼を、私達をどんな場所に連れていったのだろう。
絶望のなかで奇跡は起こるのだろうか。
彼の過ごす世界で日曜日に幸福はやってくるのだろうか。

Paul Wellerは問題提議はしても
解決策を出していない

そしてまた作り続ける

その頃、普通の学生でも
『スタカン』は知っていて
カセットテープが行き交う日々だった
その様な中で知ったこのアルバム。

でも当時は
歌詞に込められた意味の深さに
気づく人は殆どいなかった
特に当時
景気が良好だった日本では
お洒落な音楽として
カテゴライズされていた

でも当時の英国は
庶民が本当に苦しむなかで
様々なスタイルの
ポップ・ミュージックや
パンク・ロックが
生まれていった。

苦しみの中から生まれた音楽が
輝きを放って
それは遠い海を隔てた日本にも
やってきた。

まだ学生だった
私自身も理解していたとは
とても言えないけれど
歌詞を読み上げると
『なんか暗いね』とか
『なんか極端だね』とか
とにかく否定的に言われることが
とても多かった。
もうすこしだけ立ち止まって
何故アーティストが
こうした歌を作るのか
歌の意味を考えてみようよと
思ったこともある

今の私は
Style Councilの世界に
ふたたび触れることが出来て
ただただ嬉しい。

今ではデジタル・ミュージックにもなっているから
ダウンロードも出来る。
その方が手軽だし安価だ。
でも私はやっぱりCDを注文してしまった。
私のたいせつな1曲。
遥かなる思い出のために。

追記: Our Favourite Shop Deluxe  Edition (The Style Council)
          (Amazon デジタル・ミュージックへ飛びます)
   真っ先にDisc 2の方を聴くと
   1曲目の『The Piccadilly Trail』から
   もう『あの時代』の香り。
   このアルバムがイギリス、さらに
   音楽の世界を旅する原動力になったように思う。
   PVバージョンの『Lodgers』も
   入っていてほっこり嬉しい。
   Disc2はオマケ以上のご褒美ディスクでした
   少なくとも、私のように
   偏愛に満ちた人間にとっては。 
   そして久しぶりに聴いた
   『Our Favorite Shop』
   かつてアルバムのB面に収録された
   『Down On The Seine』
   『Luck』
         は聴くたびに懐かしさがこみ上げる。
   その昔、
   Jamの『Going Underground』を聴いて
   電車が来るのを待ったり、 
   ソロになった彼のライブに足を運んだり
   したけれど、
   この頃のPaul Wellerの作った曲には
   思い入れが強い。 
   今聴くと、楽曲提供者やバンドのメンバーが
   優れていたからこそ完成できた
   アルバムだったとつくづく思う。
   実はこのアルバム、CDで買うのははじめて。  
   余りにも『Spin Drifting』しすぎて
   手に入れるチャンスを逃してばかりいた。
   (つまり手当たり次第に
    見知らぬ曲の入ったアルバムを
   購入したってこと)
   あの1曲のために、どれだけ購入したことか。
   ベスト版を・・・
   ライブ版も・・・
   それはともかく
   暖かい初春の日に聴いていた
   『Speak Like A Child』と同じ位
   暑苦しいまでの
   愛情を捧げたいアルバム。



 
 spin drifting /The Style Council






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